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. | 2008.08 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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バンド月用語日 ギロッポンなどとたわけたことを言っているが、あれは業界用語でバンド用語ではない。バンド用語なら正しくはポツロンギとなる。中洲産業大学のタモリ教授がとうに研究しているが、正しいバンドマン用語変換にははっきりとした文法がある。例えばラッパの場合ひっくり返すとパッラではなくパツラとなる。本来は発音されないつまる音(促音)の「ツ」が、ひっくり返した場合にだけ出てくるのだ。スシ(寿司)はシスではなくシースーと伸ばす音(長音)が現れる。目がエーメーとなるのも同じ法則による。耳はイーミミとなって母音が強調される。深遠なものがあるのだ。ひっくり返しが当たり前になるとさらにそれをひっくり返して「スーシー」となることもある。ギロッポンもその結果かも知れないが、どうも違う気がする。「ロッポン」という語幹をそのまま残しているセンスはバンド用語の法則に合わない。この言葉にはバンド関係者は関与していないと結論づけたい。 名古屋月ハシゴ日 そのまま名古屋へ。翌日午前中にテレビ生放送出演。NHK名古屋の公開スタジオでトークと演奏だ。ピアノの椅子に座って喋って次の瞬間向き直って「Triple Cats」を猫になって弾く。「切り替えがすごい」と後で言われたが、これは習性であっという間に別人格(別動物)になることができる。最近自分の中の多重人格性を自覚している。夕方からは名古屋芸術大学のジャズコースで講座。一人で話す予定だったが、出演してくれる生徒が集まったので一緒に演奏しながら進める。公開講座でホールの客席には一般客もいる。自分の喋りと演奏、生徒バンドの演奏全体へのアドバイス、さらに生徒一人一人ヘのアドバイスをやり、仕上げの演奏をしてもらう。それら全てが観客へ伝わらなくてはならないというライブ・ショーだ。 反転月人間日 「ヌメロ」誌インタビューと撮影。何と撮影は操上和美さんだった。鍼灸医の竹村先生の患者としても旧知の仲だ。挨拶し握手し、そのまま抱きついて右の胸に耳を付ける。確かに心臓の音が聞こえる。この人、何十万人に一人の内臓全部左右反転人間なのだ!!!! どうしてそういう人が現れるのか。何度説明を聞いても分からない。反転宇宙から来た異次元超人宇宙人に違いないと決めている。操上さんのディレクションで催眠術にかかりなりながら手と上半身を撮られる。ものすごく気持ちがいいと同時に終わったら腑抜けになった。写真を撮られると魂を吸い取られるというのは本当だ。 八ケ月岳日 八ケ岳高原ロッジに前乗り。音楽プロデューサー松井女史のいつもの計らいで音楽堂で練習。回りを木々と山々に囲まれてベーゼンドルファーを弾く。遠足の子供や散歩のアベックがガラス越しにのぞき込む。音はもれていないはずなので気にならない。翌日は松原クァルテット[松原勝也(vn)、鈴木理恵子(vn)、市坪俊彦(va)、山本祐ノ介(vc)]が到着して、夕方から本番。第1部は山下ソロで「Triple Cats」、松原=山下のジャズコーナーで「Take The A Train」、「Alice in Wonderland」、「Take Five」。いったん出直してオリジナルのヴァイオリン・ソナタ「Chasin'n the Phase 」。この曲は来年のオペラシティ用にオーケストラ曲に編曲してもらうことになっている。担当は挾間美帆。そのせいもあってご両親共々4WDを駆って事前連絡なしのサプライズで客席に現れた。第2部は「Sudden Fiction」のオリジナル・クァルテット版を全曲再演。恒例の泊まり客全員とのレセプションの後に薪が暖炉で燃えるバーでクァルテットの皆と楽しい時間を過ごした。 日月田日 日田で日野皓正、川嶋哲郎と三人でコンサート。第1部は山下ソロで「Triple Cats」、日野ソロで「ブルー・スマイル」、川嶋ソロで「ラメンテーション」、日野=山下で「即興曲・日田ラプソディ」、トリオで「ノスタルジア」。第2部はトリオで「オレオ」、川嶋=山下で「この道」、日野=川嶋で「ハブズ・スプリング」、トリオでジャズアレンジの日野レパートリー「川の流れのように」。途中日野とのトークで「Triple Cats」を弾く時は猫になった気持ちだというと日野が拳法の「酔拳」「蛇拳」「猿拳」と同じだと言う。あ、なるほど。気持ちも手の動きも猫を真似るもんね。以前に平岡正明がこちらの演奏を解剖してその一つを「猫手奏法」と名付けて図解していたことも思い出した。 「CDジャーナル」2008年8月号掲載 |
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