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. | 2007.09 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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鵜月飼日 岐阜で松原勝也(vn)クァルテットと共演。鈴木理恵子(vn)、市坪俊彦(va)、山本祐ノ介(vc)。サラマンカホール主催。その前夜、梶田初江女史率いる岐阜芸術鑑賞マダム連合のご招待で鵜飼いを見物した。昔ながらの装束の鵜匠の乗る船を三艘の屋形船が囲んで進む。飲み込む寸前に獲物を吐き出させられる鵜はさぞ可哀想かと思ったらこれが大違い。この鵜たちはやる気満々で、船を引っ張るような凄い勢いで突き進み、猛禽狂鳥連合艦隊であることが判明した。実際に見ないと分からないものだ。その昼間には岐阜県主催のトークショーをやり、会場のロビーでは山下洋輔展のような展示までしてもらった。2年前に岐阜県から「織部賞」をいただいているのでその縁なのだ。そのショーでインタビュアーと交した会話が後の不可思議予知能力事件を生む。 怪奇月現象日 タモリ発見のエピソードなど話した後に「最近気になる、あるいはごひいきの芸人は」という質問をされた。「特にいません。ああいうつき合いはタモリだけで充分です」と答えたのがことの発端だ。その晩、清水ミチコが虎二匹、猫五匹と暮らす部屋を訪ねる夢を見た。それであっと飛び上がった。岐阜→飛騨高山出身→清水ミチコ。しかも考えてみれば、今、一番「気になる芸人」ではないか。これを言うべきだったのだ。忘れていたのを無意識に後悔していて、そのことを知らせてくれた夢に違いない。 その時は予知夢とは知らずに、何かあったかもしれないと「おミッチャンが、虎二匹と猫五匹と一緒に住んでいる夢を見た。大丈夫ですか」という変なメールをした。何事もなかったが、やがて真相が明らかになる。彼女の新アルバム「リップサービス」のプロモ公演を横浜に見に行くことにしていたが、丁度その日の昼間、横浜スタジアムでひいきのベイスターズが阪神と対戦する。それで、前日の仕事場の八ケ岳から車で一路横浜へ直行し、昼はベイスターズ、夜は清水ミチコという豪華日程を組んだ。ところがこれが大失敗。猛暑の球場は高齢夫婦には堪え難く、試合は早々に点を入れられるわで、これは勘弁と逃げ出した。探し出した涼しいホテルに退避したというテイタラクだ。 夜、清水ミチコ・ショーを堪能。これはすごいもので、何しろのべ100人の人が清水ミチコの体を借りて出現する。テレビではできない抱腹絶倒出し物も満載だ。こういうショーのそれも追加公演が次々にソールドアウトとなる現状は心強い。日本も捨てたものではない。翌日メールを交すと「なぜ虎を夢に見たか。阪神との試合だったんですね」というご指摘があった。再びあっと飛び上がった。そうか、そういうことだった。これで全てが判明した。 つまり、清水ミチコを忘れたことを知らせに夢に現れた清水ミチコは虎を二匹連れていた。これは阪神との二連戦の意味だった。そしてそれは罰としての意味があるのだから、清水ミチコの呪いによって、おれのひいきであり分身である横浜は虎に二回負けることになる。そういう予知の夢だったのだ。その通りに、好調なはずの横浜は投手三浦と寺原でまさかの二連敗を喫した。 まことに清水ミチコの動物にからむ超能力はオソロシイものがあって、ショーの中で披露されたVTRにも驚異の場面が写っていた。例えば、温厚な筈の白イルカが、なぜかおミッチャンにだけ猛烈な反応を起こして、水槽の中でキバ(あったっけ?)をむき出しにして向かってくる。あるいは、落ち着きの無いアルパカが、おミッチャンのホーミーでとろんとして寝てしまう。 夢を見たのはおれの脳なのだから、予知能力はこちらにあるとも考えられるが、どうもそうではなく、この件は、清水ミチコ他人脳内侵入警告予知現象と考えるほうが納得がいく。そういう事も出来そうな人なのよね。 こうして謎の虎夢(トラウマと無理矢理読ませたりして)は、真相が判明したが、さらに気になることがまだ残っていて、それは同じ夢に出てきた五匹の猫は何だということだ。猫はおれの最愛の動物であり、ということは罰の呪いはまだ残っていて、猫が全部虎に食われるということか。五匹だからベイスターズの五連敗を予知しているのか。ひえーそれはご勘弁とおびえざるを得ない。 それで、当事者の清水ミチコに「猫五匹について、どうかご回答と災厄回避のおまじないもお願いします」ってホソ*のようなことをお願いしたところ、ご返事があった。 当日の横浜ライヴで名前を出されたピアノ弾きは、矢野顕子、中村紘子、フジコ・ヘミング、山下の四人、それに自身ピアノ弾きの清水ミチコを加えるとこれがぴったり五人になる。そしてその五人は全員猫好きだと公表されているというのだ。これで全て合点がいった。清水ミチコと二匹の虎と五匹の猫の予知夢は完全に成就された。ありがたいありがたい。おそろしいおそろしい。皆様もCD「リップサービス」を聴いてどうか同じ世界にお入りください。 「CDジャーナル」2007.9月号掲載 |
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