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. | 2006.12 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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博月奕日 競馬の凱旋門賞、勝てばパリ在住のハトコのヒロミが武豊の通訳をすることになっていたのだが、とうとう通訳つきの優勝会見は見られなかった。ちなみに競艇は所詮機械の都合、競馬は所詮ドーブツの都合、だから、人間の技術と体力と英知と謀略と仲間意識と強者弱者の利用と連携と最後の裏切りなどなど、ありとあらゆる人間のサガを駆使して戦う競輪こそがギャンブルの王者だと、競輪信奉者に力説された事がある。 C月T日 NYのセシル・テイラー先生宅を訪問。2日間各4時間のノンストップのお話を拝聴し、2日目にはピアノを弾き合い一台のピアノでの連弾も実現。来年1月10日の東京オペラシティでのリサイタルに是非ご登場くださるようお願いしてきた。 平月安日 渋谷のジャズクラブJZ Bratでニュー・カルテットとゲストに天田透(fl)。以前にパリのコンサートで助っ人をお願いした天田氏は、普通のフルートはクラシックでしか吹かず、即興音楽には平安時代の笛を復元したものかアルト・フルートというでっかいのしか吹かない。今回はさらにバス・フルートという人間の背丈以上のものを持参。ステージ上にオブジェが出現した。これより大きいコントラバス・フルートは世界に3本しかなく、特別注文するしかないが、どうやらそれも手に入れるらしい。JZ Brat特有のその日にちなんだオリジナルカクテルを「平安フリージャズ」と命名。古代笛とバス・フルート入りのセッションで盛り上がる。 天田氏はドイツ在住なので帰るたびに日本の変化に敏感だが、今回は特にあらゆるメディアで乱発される"オモイ"という言葉にひっかかっていて、かねてから同じ意見のおれと意気投合。この言葉の無自覚な蔓延は宇宙人の陰謀以外には考えられないという結論に達して、現在、極秘に同志をつのって研究所を作り撃退用秘密兵器を開発中だ。とはいえこの瞬間にもテレビからはひっきりなしに聞こえてきて、ほとんど勝ち目はない。いちいち"オモイ"に悶絶死するおれたちの方が変態なのか。。 即月興日 吉祥寺MANDA-LA2でなすのみつる(b)、吉田達也(ds)とセッション。何も決めないでいきなりやるセッションがこういう演奏者達に受け継がれているのは不思議でもあり嬉しい現象だ。一晩やるとカネのタワシで体中のアカをこそぎ落とすような快感がある。金澤美也子(Key, Vo)や井筒好治(e.b)も客席に来てくれて、終わったあと馬鹿話。 提月琴日 北千住の東京芸術センターで松原勝也ストリング・カルテットと今年正月に東京オペラシティでやった「Sudden Fiction」の再演。リハの時半音で当たる和音の弾き方で夫々の音程をちょっと変えるだけでサウンドが一変するのを目撃(聴撃)。弦楽器は深い。てゆーかそういうことができないのはピアノだけだ。このコンサートは、隣に新校舎を建てた東京芸大の地域住民の皆様との交流活動の一環だ。企画の西岡龍彦先生、その校舎で教鞭をとる香取良彦さんが楽屋に現れてくれた。 爵月士日 台湾の台中市で台中爵士音樂節つまり台中ジャズ・フェスティバルに、ニュー・カルテットで出演。ゲストに迎えるアルトサックスの長老バド・シャンクと午前中からリハ。長老のオリジナル「カルーセル」の他は「タッチ・オブ・ユア・リップス」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「マイノリティ」「ヤードバード・スイート」などのスタンダード。若者達(米田裕也(as)、柳原旭(e.b)、小笠原拓海(ds))には絶好の鍛練場となった。リハのあとそのまま別の部屋で傳習活動(ワークショップ)。百人程の聴衆の前で三人にも手伝ってもらって「スワニー河」を素材に色々やって見せる。フリーっぽいアドリブもする。ジャズ・ピアニストの日本人女性ウノさんに通訳をお願いして質問も受けた。一番前の男が「セシル・テイラーのように弾くときのフレーズのアナリーゼをお願いしたい」などとむずかしいことを言う。「着地点を決めておいてアウトにやればよい」などと言うと納得していた。「日本の占領時代に台湾に色々な文化がもたらされたが、日本もアメリカの兵隊からジャズを学んだのか」というのもあった。「アメリカと仲のよかった戦前から日本ではジャズは盛んだった。その伝統の上に戦後ますます盛んになった」と特に兵隊の影響には触れなかったが、兵役で来ていたハンプトン・ホーズに秋吉敏子が習ったという話はあるし、米軍基地内のクラブは大事な仕事場だった。それを言うのを忘れた。 街の真ん中の芝生の大広場で夜七時開演。観客何と九千人! 仏国エリック・トラファズのバンドのあと出て、「やわらぎ」「Mystic Beat」「Groovin' Parade」「Increasing Tails」。フリーの演奏が特に熱狂的に受けた。次にバド・シャンクと共演。カルテットのあと米田君も入る。「ヤードバード」で乗りまくったシャンク長老、リズム隊に合図して、米田君と二人きりになる。2アルトのアカペラ・バトル・ソリが大歓声と共に台中の夜に響き渡った。 「CDジャーナル」2006.12月号掲載 |
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