. | . | . | . | . |
. | 2006.07 | . | ||
. | . | . | . | |
イラストレーション:火取ユーゴ |
||||
. | . | . | . | |
空月耳日。最近耳が変になってきたのか、テレビのニュースで言っていることがおかしい。「犯人は隣人が寄生虫であると知って殺そうとしたということです」そりゃあ殺すよな。とんでもないエイリアンだもんね。かと思うと「特許や著作権のホモを目的とする法律で・・」なるほど、そういう分野にはそういう人たちが多いのか、と納得をしてしまう。 蹴月球日。サッカーのニュースを見ているうちに長年の疑問が解けた。いつもインタビューで出る話題「ピアニストは人前で自分の楽器を弾くことが出来ませんが、どうしているんですか」今度からこう答えよう。「サッカーのグラウンドと同じです。どんなコンディションでもすぐに状況をつかみ、最高のパフォーマンスをやってゴールを決めなければなりません」。芝の長いべーゼンドルファーでも、きりっと刈り込んだスタインウェイでも、オールラウンドのヤマハでも、弾力のあるカワイでも合わせる。でこぼこの砂だらけのグラウンドでも、路地裏のストリートサッカーでも、そうと覚悟すれば自分の技は見せられるのではないか。 大月昔日。楽器とグラウンドの比較には今気づいたが、昔からサッカーとジャズの例え話は考えていた。パスを受けとったらドリブルで突破して迷わずシュートするとか、いつまでも自分でボールを持っていないでさっさとこっちにソロをよこせとか、ヒールパスがいつ来るか分からないから待機しておけとか、ここぞというときは一斉に攻めまくってフィニッシュを決めろとか、フリージャズの即興演奏で経験する現象にかこつけていた。その頃トリオで当時の西ドイツ初ツアーをしたが、ちょうど1974年のW杯西ドイツ大会の年だった。時期も5月から6月で、ミュンヘンのジャズクラブでの仕事の日には西ドイツ・チームの試合日時と重なった。これをブッキング・マネジャーが客が少数であることの言い訳にしたので、なるほどサッカーは仕事の強敵となるのかと認識したのだ。もっとも、こちらはすでに釜本、杉山以来のファンだから、それなら仕方がないとも思い、ふざけてさっきのジャズとのたとえ話をして笑おうとしたが、マネジャーのホルストは全然聞こうとしない。サッカーが嫌いなのだ。どうも「サッカー・ファンはジャズ・ファンとは重ならない。前者は野蛮ですぐ人を殴る。後者は芸術愛好家」と考えているらしい。実際弟さん夫妻が敵地の観戦で殴られたという。でもそれなら客が少ないのはサッカーとは関係ないのではないかとも思うが、これ以上聞くとドイツ人の議論地獄に引きずり込まれる。その年、ツアーの先々でW杯の経緯を追い、結局西ドイツが優勝する瞬間をテレビで見た。司令塔がフランツ・ベッケンバウアー、ストライカーが爆撃機のゲルト・ミューラー、GKはゼップ・マイヤーで決勝で活躍したのがブライトナーという選手だったと覚えている。今年のドイツ大会はあれから32年経つんだなあ。32年といやあ今32才の奴が生まれた年だ。いやあまいったまいった。日本チームも参加しているとは、いやあまいったまいった。 激月怒日。野球の横浜ベイスターズが弱くて連日激怒しているので体に悪い。思わず口をついて出る悪態はそばで聞いている家内が堪えきれずに「やめなさい」と言うほど凄い。選手監督球団親会社全てについて当人が聞いたら悶絶死するしかない言葉が次々と出る。レクター博士が乗り移っているとしか思えない。しかしこれではお互い命が危ないから、別の作戦を考えることにした。寛容のハードル下げ理論だ。最初は優勝を目指すが負数が多くなってくると、負け越し数区切り作戦をやる。5ならまだまだで10以内ならよくやっていると評価する。15くらいまでは我慢し20になっても「きりのいい数字だから」と喜んでいる。試合鑑賞では、点が入って負けたのは勝利に等しいと喜ぶ。零封負の時はヒットが出ていれば喜ぶ。投手が一つでも三振を取れば「えらい!」と褒める。一つも三振をとれなくても、一球でもストライクが入れば「おーよしよし」と拍手をする。これなら平穏だ。って、こんな事ができるわけねえだろう! この*****のクソ**$%&#&**`*`*`! 祝月宴日。国立音楽大学のジャズ部門は今年から、栗山和樹(comp.arr.)、佐山雅弘(p)、菊地成孔(sax)、金子健(b)の各氏を迎えてそれぞれ、理論、スタイル分析、歴史、アンサンブルの授業で飛躍的充実がはかられている。過日、佐山教室の親睦会が音大ゆかりのNYフレンチ・レストラン「ヨネザワ」で開催されたので、生徒多数と共に参加した。アップライトピアノがあり楽器持参の生徒たちと共に大ジャムセッションが始まる。佐山先生に遠慮してピアニカで参加していたが、いつの間にかピアノを弾いていて、いつの間にか黒鍵が二本はがれて転がってしまった。ひえー、すみません。調律科の生徒に相談して、すぐに修理賠償の相談をします。ヨネザワご夫妻お許しを! でも、これさっきのサッカーグラウンド理論で言うとどうなるんだろうね。芝がはがれた? 「CDジャーナル」2006年7月号掲載 |
. | . | ||
. | . | . | . | . |
|