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. | 2006.06 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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車の免許を取ってびっくりしたことの一つは運転席からの視点が低いことだ。自転車通学の女子高生の群れに遭遇したりすると、そりゃああなた、目のやり場がない。え、前方を見ていろ? ま、それはそうですがね。他にも色々な物が変な見え方をする。停車中に見える看板が右から縦に、「ばんら会」「どぷ宴」「そう天御」とある。何だこれはと思いながら少し動くと実は横書きで「そば」「うどん」「天ぷら」「御宴会」だと判明する。かと思うと、「性供性・1000円・約10分です」というのもあり、実にあやしい。しかし、これも最初のところの「女性子供男性」が半分隠れていた髪のカット屋さんの看板だった。それにしても季節もいいし、また長距離ドライブを敢行したいなあ。次のターゲットは出雲と決めているんだけど、必要と思われる4日間の連続休暇というのがなかなかとれないんだよな。 オー月ネット日。札幌、大阪とオーネット・コールマン公演が続く。大阪での「Song X」は後半、全員のインプロヴィゼーションにいい気持ちで突入していたら、いきなり終りが来た。デナードの手を見ていたのでとっさに同時に終わることができたが、あー、あぶなかった。オーネット音楽は、いついかなるときでもオーネットがテーマの断片を示したらそれをきっかけにズバッと終わる。これがいさぎよくて格好いい。終演後、楽屋に1968年の日本公演のサインがあるプログラムを持参したハチママが来る。オーネットに紹介すると、何度も抱きしめられていた。店に戻ってからのハチママのアフター・トークが炸裂したのは言うまでもない。常連共々大騒ぎでオーネット・ツアーを終えることができた。 筒月井日。翌日、名古屋で途中下車をしてソロピアノ・コンサートのプロモーション。ラジオ2本、新聞3本をやり、夕方新幹線に飛び乗る。席を確かめ、一度手洗いに行って席に戻ったその耳元に「いや、どうも」という声。数センチのところに筒井康隆さんのお顔があった。思わず「わ、ここで、なぜ、どうして」とわめいて飛び上がろうとすると、その肩を筒井さんがおさえながら静かな声で「しーっ、今日から東京です。光子もおります」通路を隔てた斜め前の席にご夫妻でおられたのだった。このことを後にメールで筒井さんが解説してくれた。ハイデガーによれば、1.既知のものが突如性を伴ってあらわれた場合は驚愕。2.未知のものが徐々に接近してくる場合は戦慄。3.未知のものが突如性を伴ってあらわれた場合は仰天。ということになっているが、この場合は1だったとのこと。終点東京駅で立ちあがった筒井夫人を見ると宝石つきのずたずたのジーパンをはいていて、これも1の驚愕。光子夫人は非常に若く見えるので、筒井さんが不良娘を連れて歩いていると言われても知りませんよ。 笛月太鼓日。ピットインで仙波清彦(ds)、天田透(fl)と突発セッション。2004年パリでの「パシフィック・クロッシング」プロジェクトの演奏に仙波さんと共に参加予定の日本笛の藤舎名生さんが来られなくなり、急遽、南ドイツの大学で教えている天田さんにお願いするということがあった。今回、日本に里帰り中に是非一度というので集結した。現場は高橋かおりさん(vn)の乱入もあり大盛り上がりの一夜となる。天田さんは普通のフルートではクラシックしか吹かず、インプロヴィゼーション・ミュージックではバス・フルートと日本笛を吹く。古代笛の復元製作演奏もやる。これについての研究はすごいもので、学者に混じっての渾身の論文がネットで見られるので皆さまも是非ご覧ください。世界音楽史の常識も覆そうかという真実の探求家である天田さんは、質問をすると数時間は喋り続けてくれる。ステージでのトークもその点に留意しながらお願いしたが、最後は「平安時代の音楽はフリージャズだったと思う」とのお言葉が発せられた。イエイ! 金澤月美也子日。初台・ドアーズで「る*しろう」と共演。「る*しろう」を率いる金澤美也子とは、故ジミー金澤の二十三回忌で会った。ジミーは1962年にグアム島の米軍基地慰問に連れていってくれたバンマスでアルトとヴォーカル。その後新宿の「J」を創立した。ずっとご無沙汰のままだったので懐かしくて出席すると娘の美也子さんがいたというわけ。母上は女優の和田悦子でその弟が和田浩治、二人の父上が和田肇というのだから音楽・芸能の血は濃い。やっている音楽を聞かせてもらったらハンパではなかった。「る*しろう」は美也子、井筒好治、菅沼道昭のコンビで12年やっているが、鍵盤入りでこんなに面白い音楽ができるとは、驚異のガイキチ集団だ。最初のセットで代表作「鳥」に一人参加し、セカンド・セットでニュー・カルテットで演奏した。アンコールでは美也子作の「キアズマが好き」という格好いい曲で全員入り乱れた。客席には孫娘を見守るように秋満義孝(p)先生が座っているという、これも美也子ワールドならではの素敵現象も出現したのだった。 「CDジャーナル」2006年6月号掲載 |
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