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. | 2005.12 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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陽月水日。NHK
BS「井上陽水空想ハイウェイ」のゲスト。「少年時代」と「最後のニュース」を伴奏。トークでは陽水さん出身の筑豊田川の話が出る。こちらも少年時代に四年間住んで小学校を卒業しているから故郷感覚だ。田川弁が懐かしいが、「しゃきあぐっど」(ぶんなぐるぞ)とか、「しゃーしー」(うるさい)など怒る言葉ばかり思い出す。あと、「ツヤつける」があって、これは格好つけやがってという意味。使用例として、陽水さんの名文がメールで届いた。「なしか、きさーーん! そげな、田川の言葉、忘れたげなふーして。おまえもアレやろ、一度でも、炭鉱のボタ山であそびよったモンが、そげん、ツヤつけて、どげんするとか?! しゃーけあぐっど!」。わー、その通りですが、しかし、田川出身で一番の恰好いいツヤつけもんは誰が考えても陽水さんだよな。 頭月痛日。京都に集結した国際頭痛学会というトンデモ学会、ではない真面目学会の最終日のアトラクションで、林英哲さんとデュオ。舞台で花束をくれたのは金髪碧眼でスタイル抜群の大柄美女。これぞ「ジャズ享受時における頭痛の発生と前頭葉のはたらきについて−海馬と海綿体よりの考察」という名論文を書いたドクター・スカペッタにちがいない。 飛月騨日。客員教授をしている名古屋芸大ジャズコースの生徒達と斐太高校の音楽鑑賞授業に参加。前日に飛騨高山に着いて街を散策する。清水ミチコ嬢の実家がこの街の「if珈琲店」なのはその筋では有名だ。早速見学に行ったが、あいにくクローズの時間だった。外観を何枚かデジカメ写真に撮る。後日、おミッチャンに送ったらことのほか喜んでくれた。 舩坂校長、小坂先生、それと名古屋芸大の星先生と会食。おミッチャンがこの町の小坂楽器店に「矢野顕子」のレコードを注文したら「和田アキ子」が届いたというエピソードがあるが、小坂先生はその店のご子息。今や家に伝わる伝説になっているらしい。 飛騨の話は太古までさかのぼり非常に面白い。木工の名人が出るのは当たり前で、個人名を名乗らないという。有名な左甚五郎は、飛騨の甚五郎から転化したとも言われる。桂三木助の落語「三井の大黒」を思い出す。風来坊の上方大工が江戸の大工の棟梁と知り合いになる。「お前さん出はどこだい」「飛騨の高山だよ」それなら甚五郎先生は知っているかと聞くと、本人なので答えられず「つまらん」と言う。「やはり凡人には分かんねえんだな」などと棟梁は言うが、やがて技量が現れて正体がばれる。シャケとブリの話も出てくる。「おーい、飯だよ」「飯か、おかずはなんだ」「シャケだよ」「またシャケか。ブリはないか。ブリはうまいぞ」「またあんなこと言ってやがら」高山ではブリが好まれるということを聞いて納得した。 音楽鑑賞授業はまず名古屋芸大のビッグバンドが数曲演奏。休憩の後出ていってピアノを弾きながら、何をやっているかを説明する。いつものように「スワニー河」を題材に色々やるが、リハの時に思いついて、名芸大のメンバーに手伝ってもらうことにした。リズム・セクションから出てコードを響かせ、その上でアドリブ・ソロの出来る人にやってもらう。その間「ここからアドリブです。どう終わるでしょうか」などと実況放送をする。最後はメンバー全員に参加してもらって楽譜のないビッグバンド状態が出現した。これは新体験、新発見でした。 白川月郷日。わざと山道を選んで白川郷へ向かったのが大失敗。つづら折りの急坂の急カーブのすれ違い不可能路を延々とアップダウンしたら、後部座席でふらふらのゲロゲロになった。これなら落人が隠れたら絶対に発見できないと実感しながら到着。写真でおなじみの異様かつ美しい古民家が立ち並ぶ。その一軒が「山下家」だったので、さっそく縁側に上がり込んで写真を撮る。ちょうど年に一度のどぶろく祭りだったがゲロ気味で参加できなかったのは不幸か幸いか。 金月沢日。金沢は初期トリオ時代から呼んでもらっている記憶が層をなす街だ。今回は「もっきりや」でソロピアノ2デイズ。控室代りの姉妹店「ペーパームーン」には飼い猫や外猫が入り乱れて出入りするので、猫好きには最上の楽屋だ。ジャズ喫茶のカウンターに寝そべって音を聞きながら常連客から撫でてもらっている猫を初めて見た。雨なので「もっきりや」の軒先まで行って傘を畳みコートを脱ぎ「うりゃー」などと気合いを入れながらシューズを履き替える。中の客から全部丸見え。着替えも「ペーパームーン」のトイレの中という、久しぶりにファンキーなライブだった。 今回、京都高山金沢とまるで「火サス」(「火曜サスペンス」のことを通はこう呼ぶ)だが、毎週の画面では、ラスト15分、相変わらず皆さん正装で崖の上や河原や海岸に集結して犯人の長い独白を聞いているのだろうか。 「CDジャーナル」2005年12月号掲載 |
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