. | . | . | . | . |
. | 2001.10 | . | ||
. | . | . | . | |
. | イラストレーション:火取ユーゴ |
. | ||
猛月暑日 あまりの暑さに、頭朦朧、日付も定かでない。電車に座っていると目の前に立った長脚出し娘、黒地に白で「Cecil McBee」と書かれたブティックの紙袋を持っている。Cecil McBeeとはおれのNYの相棒ベースの名前だ。昨今大変な流行りようで、実は、どうなっているのだこれはと弁護士頼んで調査中。相手は「素敵な名前をと思い、まずCecilと思いついた、次にMcBeeと出た」と釈明。限りなくアヤシイ。裁判の折りは皆さまご声援を。電車娘は馬鹿娘かと思ったら、読んでいる本が「素複関数」とかいうもの。降り際にのぞいたら本当に難解数式記号満載だった。分からんものだ。 抱月腹日 沖縄出身でブラジルに住むみどりちゃんから恒例の面白メール。最近は日本人駐在員の月賦誘拐が流行している。すぐ釈放されるが身代金を月賦で3,000ドルずつ払う。払わないと家族をまた誘拐すると脅かす。警察も銀行もグルらしくまったく取り締まれない。 馬月鹿日 カーナビを口述モードにすると茶髪のお姉ちゃんのイラストが出てきて首をかしげてマイクを突き出す。からかいたくなって「君いくつ?」と訊いたら真面目な声で「周辺の紳士服店」と答えた。それならってんで以下「名前なんていうの?」「公営ギャンブル場」。「お酒飲もうか」「5キロ迂回」。「オッパイ見せて」「地図を詳細にする」だと。 7月28日 檜原村。ログハウスと森林に囲まれた野外ステージのある「フジの森」という場所で年に一度の恒例コンサート。もう11年続く催しで、おれは檜原村の太鼓グループ深山会と共に、7年前から出演。今までソロに加えて、富樫雅彦(perc, 2回)、金子飛鳥(vn)、八尋知洋(perc)、津上研太(as)、そして今年は堀越彰(ds)という面々を紹介した。主催グループは冬雷塾といい、村外からのメンバーは、コピーライター、元ミュージシャン・今IT屋、歯科医、ディスプレーデザイナー(便利屋さん)、生協パート職員、兼業農家のシステムエンジニア、公務員(環境省、都庁)、会社員(百貨店、団体職員)、獣医師、イラストレーター、大学教授、環境プランナー、編集長、と多彩。檜原村の方達は、林業家、花卉栽培農家、製材業、村会議員、農協職員、パン職人、レントゲン技師、温泉センター職員。打ち上げで出てきた手作り食べ物の白眉はでっかいブタの丸焼きだったが、他にも、鮭の燻製、50人前鉄板パエリア、炒飯詰め鶏の丸焼き、南大東島直送鮪、「叫化鶏」など他の追従を許さない。メンバーの一人で山下が十年前からかかっている歯科医の大谷哲也さんが、注射器とドリルを両手に「やってくれますね」と迫ったのが出演のきっかけ、という説が信じられている。 7月29日 藤七瀬の紹介でREF主催の西麻布のクラブイベント「Tokyo Jazz in the7」に出演。DJと共に彫刻展、ファッション・ショウ、ジャズ・バンド演奏、ダンス・ショーなどなどが一晩中行われる中の30分間ソロピアノをやる。後の七瀬からのメールでは「あれは本当に弾いているのか、早すぎる、打ち込みではないか」「CD買う」「追っかける」「目が潤んだ」などの反響あったと。若者に伝わって嬉しい。今回はもちろんOKだったが、中には約束破って逃げ回るひどい主催者もいる。こういうのがいるとクラブの評判落とすよ。分かってるな、代官山のシューよ。 8月3日 ヨコスカ・ジャズ・ドリームス2001。渡辺貞夫ウイズ・アフリカン・パーカッション、マリーナ・ショウ、こちらの4GユニットにMALTA(as)がゲスト参加。貞夫さんは手慣しに楽屋でバッハを吹きっぱなし。去年サントリーホールでやったバッハの演奏会は見事なものだった。MALTAはさすがに本番を盛り上げる。おれは「ありがとう、ヨコハマ・ジャズドリームス」と間違えて顰蹙。以前にも小樽の市街地野外コンサートで「クシロのみなさんありがとう」とそれも大声で言ってしまった。 話を聞いた釧路の連中は喜んだが、小樽は大顰蹙。以後お呼びがないのは当然か。 8月4日 大阪「インタープレイ・ハチ」でハチママの誕生祝いソロ。31年前、万博の年に偶然立ち寄り、バンド演奏の休み時間に当時のトリオで飛び入り演奏したら、ドラムのペダルが壊れ、ピアノの弦が切れた。出ていた関西の大御所バンマスが激怒。その時にハチママがこっちの味方をした。これで話がこじれ、ハチは関西の敵と見なされる。過激一家にワラジを脱いじゃった状態で、以後長い付合いとなっている。打ち上げで今の若い常連達のジャム・セッションが始まる。皆驚くほどうまい。やがてそこに、ハチママ世代の古常連達が乱入してわめき出し、入り乱れての渾沌のフリージャズが朝まで続く。これが伝統となっております。 「CDジャーナル」2001年10月号掲載 |
. | . | ||
. | . | . | . | . |
|