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muji . 2007.12 .
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イラストレーション:火取ユーゴ
  山下洋輔の"文字化け日記"
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  9月13日 国立の一橋大学兼松講堂で国立市制40周年記念イベントのオープニング・コンサート。1980年頃に一橋大学で学生たちと共演した時に作曲した「ファースト・ブリッジ」を、30年ぶりに学生や市民有志の人たちと再演する。分野関係なく参加加能の呼びかけに15人が参加。ピアノのそばで踊りまくるモダンダンスの二人組の女性が華を添えてくれた。

9月15日 ジャズのスタンダード・ナンバーを絵で表現している画家の山本容子さんと岡山でイベント。ソロピアノとトークを楽しむ。岡山ジャズ・フェスティバルの一環で、翌日はニュー・カルテットに加えて松本治(tb)、川嶋哲郎(ts)で演奏。

9月19日 高松で、コンサート主催者からいつの間にか画家に転じた西村記人が1カ月開催している展覧会の関連イベント「アート・スパイダー」に出演。西村さんのライブ・ペインティングと、音楽、DJ、ダンスが共演。出演者は、ニュー・カルテットのほか、大倉正之助(大鼓)、松浦俊夫 (DJ)、PIRAMI(cello)、KETZ(ダンス)。西村さんのおかげで東京の「クラブ」にも何度か出た。その場で何事かができ上がるジャズ・スピリットをいつも思い出させる人だ。

9月23日 ピットインで菊地成孔(ts)とデュオ。前回超満員で酸素不足で倒れた人が出たこともあって、今回は人数限定で発売。すぐに売り切れたという菊地現象は相変わらずすごい。

9月29日 大山平一郎指揮の大阪シンフォニカー交響楽団と共に、福山、福岡、宮崎と「ラプソディ・イン・ブルー」三連チャン。宮崎の主催者が旧知のジャズファンで、大阪シンフォニカーのツアーのソリストとして推薦してくれたらしい。コンミスの林七奈さん経由で豊嶋泰嗣氏(vn)から「レオピン・ファイブ」が届いたのは心強かった。舞台での落とし物を拾ってくれた村上慈さん(vn)共々団員の方々と交流もできた。

10月3日 旧友の画家、松井守男がパリの名門ギャラリー、ベルネム・ジュンヌで開く個展のオープニングに駆けつける。オープニング・レセプションといっても、飲み物も食べ物もスピーチもなしで、画廊に溢れんばかりの大勢の招待者たち。これがパリ流らしい。終了後、ナイトクラブに行かないかという上品なご夫妻の誘いを断って、松井さんは住んでいるコルシカから来てくれた人たちや日本からの関係者と共に深夜のカフェで歓談。ゴッホやセザンヌの伝統のある名門画廊のオープニングのあとパリのナイトクラブに現れるという華やかな画家の時間も選択できたのに友人への筋をあくまでも通す人だ。

10月8日 仙台のクラシック・フェスティバル「せんくら」に二日間出演。昨日は、飯森範親指揮の山形交響楽団と「ラプソディ・イン・ブルー」。今日は、ソロピアノを二コマの予定だったが、たまたまアマチュアオケの指揮で仙台にいた茂木大輔(oboe)が飛び入り参加してくれる。N響の仕事からそのまま移動して来ていてちゃんと燕尾服で登場してくれた。

10月12日 愛知県豊明市の幼稚園で、子どもたちを前にジャズ教室。この幼稚園の副園長の息子が国立音大生でジャズコースの教え子という縁。さすがに、幼稚園児の前で演奏するのは生まれて初めての経験で、全く何も聴かない騒乱状態を危惧したが、音楽が中心の教育がいきとどいていて、拍手をもらい帰り際にはなつかれて体を触られたりした。

10月20日 法政大学の「ジャズ研究会」及びビッグバンド「ニュー・オレンジ・スウィング・オーケストラ」と共演。祖父の設計した第一校舎が取壊される記念イベントに4月に招かれた時に「この大学のジャズサークルの学生と会いたい。共演したい」とわめいたのが発端だ。皆格好よかったけど特にビッグバンドの女性ドラマーには驚嘆。

10月21日 オーチャードホール。東京国際映画祭の関連イベント「声優口演」に出演。キートンの「探偵学入門」に戸田恵子と羽佐間道夫という名声優がライブでせりふをつけ、それをニュー・カルテットで生伴奏した。エキサイティングな新体験だった。戸田恵子がジャズのスタンダード・ナンバーを歌い、山寺宏一が究極芸のサッチモの物マネで登場するという豪華アトラクションつきだ。羽佐間道夫とは旧知の「面白い親戚のお兄ちゃんのみっちゃん」という間柄だが、初めて人前の仕事を一緒にした。

10月27日 徳島で皇太子殿下ご夫妻もご臨席される国民文化祭のオープニング・イベントに出演。神津善行さんの構成で、オーケストラや邦楽に交じって、日野皓正(tp)、海老沢一博(ds)、藤舎名生(笛)と一緒に即興パートを担当。最後は二百人の阿波踊り隊が登場し、会場は興奮のるつぼと化した。
 このような日々の合間を縫って、来年一月発表のピアノ協奏曲を作曲する毎日だとは、自分でもシンジラレナーイ!






「CDジャーナル」2007.12月号掲載
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