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muji . 2006.03 .
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イラストレーション:火取ユーゴ
  山下洋輔の"文字化け日記"
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  天月罰日。言葉が気になる日々。グルジアはジョージアと書く。以前にトルコのクルド人地区のホテルの地図で見て、ついにアメリカの州がここまでのさばって来たかとびっくりした。日本の空港の看板にはローマ字でマック・グレゴールと書いてあってこれがマクレガーの事だと気づいた。そこでジョージア→ゲオルグ→グレゴールと連想したが、グレゴールはジョージアとは関係ないか。でないとグレゴリアン・チャントがジョージア・チャントになってしまう。グレゴリオ聖歌は全部「わが心のジョージア」だったと、またアメリカが言い張りかねない。マックの方は、アーサーにつければマッカーサー、アダムにつければマッカダム、ドナルドにつければマクドナルド、イントッシュにつければマッキントッシュ、ビーにつければマクビーだ。以前ここでも報告したブティック「セシル・マクビー」を相棒ベーシストのセシル・マクビーが訴えた件だが、残念ながら逃げられてしまった。最終的にはセシルが住んでいるメイン州の判事が公判を開かないと決断したからだが、もう一度言いますよ。「その名前はどうしてできたのですか」「欧米風の名前をつけようと考えているうちに、<セシル>と思いつきました。それだけでは寂しいので、さらに考えると<マクビー>と出ました」こんなことが本当な訳はないだろうが! 創始者の女性社長がジャズ・ファンだったにちがいないのだ。その人はもう関係していないから分からないと言う。なんで一言「素晴らしい名前なので使わせていただきました」と言えないのか。いずれ天網恢々の厳罰が下るからそう思え。

N月Y日。ニューヨーク・トリオはその後、明治学院大学(主催:明治学院バッハ・アカデミー)、名古屋「ラブリー」、四日市「ビーボ」、京都「ラグ」、奈良件王寺町「やわらぎ会館」とやり、東京に戻って川嶋哲郎(sx, fl)を加えて二日間レコーディングをし、草月ホールで最終公演をやって無事うち上がった。関係各位、ありがとうございました。新アルバムはタイトル「ミスティック・レイヤー」全8曲。中に1曲カバー曲があってこれがミンガスの「Fables of Faubus」であります。お、何だ何だとお思いのディープな方々も含めて、皆様、どうか2月22日の発売をご期待ください。

弦月楽日。恒例の東京オペラシティでの06年新春リサイタルは、松原勝也ストリング・カルテットとの一夜。第1部はピアノソロと昨年静岡で初演したヴァイオリン・ソナタ「Chasin' the Phase」の再演。第2部は発作的組曲「Sudden Fiction」で、これは全13曲。ちょうど公演日の13日の金曜日に合致した。松原氏の他に、鈴木理恵子(vn)、川本嘉子(va)、山本祐ノ介(vc)という名手がそろっているので、遠慮なく超速のバップ・フレーズなど好き放題をやらせていただく。アドリブも随所でお願いしたが見事なものだった。「どこからがアドリブなのか分からなかった」という感想があったほどだ。鍛えられたクラシック演奏家の底力は計り知れない。

打月上日。福岡でニュー・オリンズ救済チャリティ・コンサートに参加する。出演は、九州大学の学生ビッグバンドを皮切りに、田口悌治(g)カルテット、内田浩誠(p)グループ、岩崎大輔(p)グループ、伊藤君子(vo)、辛島文雄(p)、日野皓正(tp)の面々。アクロス福岡の大ホールに聴衆二千人。
 最後の「聖者の行進」では出演者全員登場し、ピアノは入れ代って弾き、やがてホーン奏者全員が日野晧正を先頭に客席乱入からロビーへと行進し、そこで寄付を呼びかけた。 大成功の余韻のまま打ち上げ場所の「ニューコンボ」へと移動。宮崎たかし氏と共に司会をした中西久美嬢は芸大フルート科出身で、あれこれ話をする。局アナ時代もあったと判明し、年末恒例の「美人局アナ日本一決定戦!」のファンだと言うと、TBS系列で出場した経験があるというのでびっくり。最初の話ではハワイでトローリングして海岸で演奏をするということだったが、飛行機の中でサメのかぶりものを渡され北島三郎の「北の漁場」という曲を聴かされるあたりで真相発覚。実際はビキニ姿で大きなサメのかぶりものをかぶり、船に乗って荒波の中でフルートを吹いてサメを誘い出す(!)というパフォーマンスだった。これは凄い光景だなあ。それは見たぞという記憶が今植え付けられそうだ。いや、本当に見たんじゃないかなあ。ビキニのサメ美女。それでコンテストの結果はどうだったか、これは聞きそびれた。
 などと言っているうちにもステージではジャムセッションが始まり、日野皓正は吹きまくり、辛島文雄が弾きまくり、伊藤君子が歌いまくる。地元ミュージシャンも総出の大セッションが延々と続く。少しも飽きない。鍛えられたジャズ演奏家の底力も計り知れない。



「CDジャーナル」2006年3月号掲載
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